欲だるま
仏になんてなろうとしちゃいけない
悪人でいいんですよ
もっと欲を持ちましょう
職場で向かい合わせで仕事をしているおじいさんによく言われている。
確かに私は欲が少ない。
欲が少ないのか、長年多くを諦めてきたが故に欲を抑えるのが癖になってしまったのかもしれない。
大義や理由がなければ欲を持ってはいけないと思い込んでいる自分がいることは薄々気が付いていたが、余りにも上手に隠してしまうので、欲を自覚することが難しい。
「私は欲を持つ事すら難しいのか」
自分のどうしようもなさにうんざりしながら本屋に行くと、たまたま目に入ったのはカラー占いを取り扱った雑誌。いつもであれば素通りしてしまう内容であったが、不思議と読みたくなりパラパラとページををめくってみた。
占いの内容は相手から相談を持ちかけられた時にどのような反応をするかでその人の色が決まるというものであった。私はきっと「うん、うん」と真剣に聞いてしまうだろうから、そういう項目を選んでみると”緑”に当てはまるとのこと。
「緑の人は他人の事ばかり考えて自分の事をそっちのけにしすぎです。
もっと自分の欲を優先しましょう」
人にも本にも言われてしまっては仕方がない。
「欲、欲、欲」
頭の中で呪文のように唱えながら、家に帰る。
茶碗に注いだ熱いお茶を啜りながら、手づかみで羊羹をムシャムシャとやった。
普段だったらやらない不作法であるが、心に不思議な愉快さが湧き上がってきた。
欲深いということは少し不作法なことなのだろう。